村井正先生の国際税務勉強会「一角塾」にオンライン参加しました。昨年までの勉強会では大阪に集まっていたけど、コロナでの中断をはさんで、先月からオンラインで再開となりました。今日はオンラインになってから2回目。旅費がかからないので正直ありがたいです。
今日は消費税の輸出免税に関する裁判例(東京地裁平成27年3月26日判決)の研究をやりました。日本の旅行会社Xが、韓国の旅行代理店Bの求めに応じて、韓国からの訪日客のために、日本国内の宿泊や飲食等の手配を行って、その対価をBから受取り、輸出免税扱いとして申告したところ、税務署から、それは国内で完結する役務提供なので輸出免税ではないとして課税処分を受けた案件です。
Xは裁判で、Xは国内で組成した旅行パッケージ商品のような資産をBに販売したもので、輸出として資産の譲渡をした(消費税法7条1項1号)、非居住者に無形資産の譲渡をした(消費税法施行令17条2項6号)、又は非居住者に役務の提供をした(同7号)ことになるので輸出免税にあたるという主張をしました。
国は、旅行パッケージ商品に資産性はなく、また、旅行中の飲食や宿泊は国内で完結するサービスであり、非居住者に対する国境をまたぐ役務の提供ではないので、7号の非居住者への役務提供から除かれるとして、課税売上になると主張しました。
裁判所は結局、国の主張を認め、地裁、高裁いずれも納税者敗訴となり、最高裁は不受理で終結となりました。僕としては、疑問の残る判決だと思いました。Xが国内で手配して旅行パッケージを組成するという役務は、韓国法人で非居住者であるBに提供され、Bは国内で直接便益を受けたわけではないので、輸出免税の要件を満たすと思えるからです。
実際に日本に旅行に来て飲食や宿泊をしたのはBからパッケージ旅行を買った韓国人観光客であり、その韓国人観光客の日本国内での飲食と宿泊代はXが払ったので、これは飲食店やホテルの課税売上になるけど、XがBに提供したパッケージ旅行の組成という役務はその飲食や宿泊とは別物であり、これを同一視するのは無理があると思います。
村井先生は、消費税本法の7条1項1号の「資産」に、当然に無形資産も含まれるという解釈が可能なので、無形資産(消費税法施行令6条)に列挙されていないからといって、パッケージ旅行商品が資産に該当しないと直ちに考える必要はないという意見を示されました。もしパッケージ旅行が商品として流通するものであれば、たしかにその考え方が可能だと思いました。
輸出免税の趣旨のひとつに、国内事業者の国際的な競争力を低下させないことがありますが、外国法人への役務提供に消費税をかけることは、まさに競争力を削ぐことにつながるというのが僕の考えです。いずれにしても、物品の輸出の場合と違って、サービス提供に関する輸出免税の判定は、ますます難しくなっていくようです。
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