22日は、国際課税一角塾に参加しました。アメリカで日本法人の子会社が移転価格課税され、それに関する相互協議による合意に基づき国内では減額更正が行われた事件(東京高裁平成8年3月28日)について報告を聞きました。
この事件は少し変わっていて、国内で対応的調整(外国で追加課税されたことによる二重課税を防ぐため日本の所得の減額処分をすること)として行われた減額更正に対して、第三者が住民訴訟で、その減額更正の取消しを求めたものです。
事件当時の日米租税条約には、対応的調整を義務付ける明確な規定がなかったので、根拠なく税を還付するのは違法であるというのが原告の主張でした。
一般的な税務訴訟における原告の請求は、課税処分の取消しや還付金の請求であるのが通例ですが、この事件は、自治体による還付処分を違法として、その取消しを求める特殊なものです。
裁判所の結論としては、当時対応的調整の明確な規定がなかったとしても、二重課税の防止というのが租税条約の最大の目的であるから、租税条約に基づいて対応的調整を行うことは違法ではないとして、還付の取消しを認めませんでした。
現在は対応的調整の規定が、租税条約(日米租税条約9条2項)にも国内法(租税条約実施特例法7条)にも制定されているので、この事件のような論点が生じることはないと思いますが、租税訴訟のバリエーションの多さを感じる話でした。
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