本日「一角塾」にオンライン参加しました。テーマは移転価格税制にいう「機能分析」について。
移転価格税制とは、国内企業が海外の関連会社(子会社や親会社等)との取引を利用して、海外に所得を移転する行為に対処するため、その移転により減少した国内企業の所得を適正金額に戻して計算する制度です。
古くは1920年代、アメリカの各州間の所得移転を是正する「ユニタリータックス」という仕組みがありましたが、それが移転価格税制の由来とされます。ただ、日本ではさほど古くなく、1986年になってから導入されました。
移転価格税制は、簡単にいえば、海外の関連会社(国外関連者)に販売する物やサービスの売上価格が低すぎる場合、または国外関連者から買う物やサービスの仕入価格が高すぎる場合に、海外への所得移転が生じているので、その移転がなかったものとして国内企業の所得を計算するというルールです。
つまり、所得移転があった場合には、本来独立企業どうしであれば成立するであろう取引価格(独立企業間価格)を算定して、その独立企業間価格で取引が行われたものとして、国内企業の所得を計算するというわけです。
その仕組みないし基本的考え方自体は簡単に理解できますが、実際には、適正な独立企業間価格がいくらなのかという問題をめぐって、国税当局と企業との間で衝突が繰り返されています。
実際に他の独立企業同士で同種の物やサービスが売買されている例があれば、その価格を独立企業間価格とみなして計算できますが(独立価格比準法)、多国籍企業が扱う物やサービスは特色のあるものが多くて、同種の取引を見出すことが難しいという事情があります。
そこで、利益分割法などのテクニックが編み出されてきましたが、利益分割法を用いて価格を算定するには、まず、取引を行った国内企業と国外関連者が互いにどのような機能を果たしているかを分析しないといけません。
この機能分析は、どの当事者がいかなる機能とかリスクをどのように負担しているか、またどのような資産をもっているかをもとに、とても複雑で高度な検討を要するものです。結局それは個々の企業によってすべて異なるわけなので、これまでの裁判例においても、普遍的で明確な判断基準の定立には至っていないという印象です。
移転価格税制は僕にとってあまり実務で触れたことのない世界で、臨場感がないというのが正直なところです。民間企業グループ各社の機能、リスク負担、資産の実態について、外部機関であり、かつ利害が対立する国税当局が調査して、的確に分析するということ自体、もともと困難だと感じます。
ただ、国境を跨ぐ組織をつくる企業がますます増える時代のなかでは、国際課税分野においても今後ますます重要になっていく制度であることに違いありません。
Memo
双方が重要な無形資産をもっている場合=残余利益分割法を適用という整理
機能・リスク・資産の分析。なかでもBEPS後はリスクを重視。
関連者同士のコミッショネアは基本的に認めない。ノーリスクの契約であり歪んでいる。
ロイヤリティ料率の比較対象取引を持ち出しても国税は不利になりやすい。個別性が高い。
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