国際課税勉強会35(所得税における居住者・非居住者の判定)

今日は国際課税一角塾にオンライン参加し、所得税法上の住所の所在(日本居住者に該当するかどうか)が争点となった東京高裁令和元年11月27日判決についての報告を聞きました。以前の記事で言及した裁判の控訴審。上告なし。

個人納税者Xは、日本法人の役員であると同時に、海外関連会社の管理者として活動しており、年間滞在日数をみると、日本、アメリカ、シンガポールの3等分に近く、日本とシンガポールを比べると、わずかに日本滞在日数が多いという状況でした。

課税庁YはXを日本居住者と認定して課税したが、Xは自分は非居住者であるとして課税処分の取消しを求めたもの。居住者か非居住者かにより、Xの役員報酬に対する源泉所得税の金額が変わってきます。(居住者である方が源泉所得税が大きくなる)

この事件では裁判所はXの主張を認め、Xは日本居住者でないのでYが行った課税処分を取り消すという判断をしました(地裁も高裁も)。本件について、裁判所はXの職業上の本拠がシンガポールにあったことを最大の理由にして、Xの住所は日本になかったと判示しました。

裁判所がなぜそこまで職業上の本拠にこだわったかについては、どうも詳細な説示はないようにみえます。この職業本拠地について、通常は他の要素(親族や財産などの所在)と並列的であり、突出して重視されるわけではないように思いますが、相続・贈与税と所得税とで判断のウェイトを変えるべきか、それとも完全に一致か、というのも興味深い論点です。

【塾長memo】 借用概念の限界、価値の創造地での課税(BEPS2.0に通じる)、シャンツの源泉地課税3/4、国際私法の重要性

金山知明税理士事務所・国際税務コンサルティングオフィス

神戸に事務所登録をしている税理士、米国公認会計士、大学教員です。

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