本日は国際課税「一角塾」に参加し、移転価格税制にいう「寄与度利益分割法」の適用関係が争われた事件(東京地裁平成24年4月27日判決)についての報告を聞きました。
この事件は、エクアドルの国外関連者からバナナを輸入仕入して非関連者に卸売しているX社に対して、その仕入価格が高すぎるとして課税庁Yが移転価格税制により課税したものです。
基本三法が使えないという前提のうえで、Yは寄与度利益分割法を適用したわけですが、X側は、基本三法のうち再販売価格基準法が使えると主張。
またXは、寄与度利益分割法を使うにしても、平成12年~13年度にXが負った損失は、日本市場でのバナナ価格の下落によるもので、Xのみに帰属するべきなので、それを分割対象利益(損失)として国外関連者に配分するのは不合理と主張。
裁判所はまず、エクアドルでは政府によるバナナ輸出の最低価格が設定されているので、そのような最低価格規制のないフィリピン産バナナなどの仕入価格を比較対象とすることができず、その価格の差異を調整することも困難として、再販売価格基準法は使えないと判示。
また、Xが負う営業損失は市場主義経済のもとでは常に生じうるものだから、Xだけが影響を受ける特殊要因ではないので、日本市場の変動による損失も分割対象利益(損失)に含まれると判示。
これ以外にも、販売費を分割要因として使うことの合理性についても争われ、Xの主張は結局退けられました。寄与度利益分割法といっても、結局は内国法人と国外関連者が計上した販売費の比率によって分割対象利益が配分されるという単純な計算が認められたことになります。
いずれにしても、移転価格税制による裁判例は、税務調査の後に、課税を受けてから裁判上で独立企業間価格の算定についての反論をする形になりがちで、納税者はいつも後手に回るという感じがします。
おそらく、最大の防御は、毎年の法人税申告のときに、独立企業間価格の計算について十分な検討をして、できるだけ詳細かつ根拠ある文書を残しておくことだろうと思います。
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