今日は国際課税「一角塾」に参加し、タックスヘイブン対策税制と租税条約の抵触が争点となった事件(最高裁平成21年12月4日)についての報告をきき議論しました。
この事件は、シンガポール法人が外部に売却した株式の譲渡益について、タックスヘイブン対策税制(措置法40条の4)により、その法人の株式を所有する日本居住者(個人)に対して雑所得として約20億円もの課税が行われたもの。
主な争点は、タックスヘイブン対策税制による課税が、日本シンガポール租税協定7条に抵触するかどうかで、グラクソ事件(最高裁平成21年10月29日)と同様の争点が、個人課税について検討されたものです。
タックスヘイブン対策税制は、低課税国で生じた所得を得た外国法人が、日本の居住者や法人によって所有(支配)されている場合、その所得を日本の居住者や法人の所得に加算して課税するというものです。(つまり、タックスヘイブンを用いた租税回避の防止規定。)
この件は、もともとシンガポール法人が持っている株式を、資金繰りの都合上売却したというもので、日本で生ずべき所得を意図的にシンガポールで発生させたものではない、つまり租税回避事案とは言えないようです。
このような場合にも、外国法人が得た所得に日本で課税を行うことが妥当かどうか。最高裁の判断は、妥当だということになったんですが、それはもちろん法的評価(租税条約との関連性)としての妥当性であって、課税のあり方としては、納税者にとってあまりに酷だという気もします。
日本にこのような税制がある以上、タックスヘイブンにある外国法人を支配している日本居住者や法人は、とにかく常に、外国法人の所得の発生に十分に注意しておく必要があります。
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