国際課税勉強会26(移転価格税制・残余利益分割法)

今日は、国際課税「一角塾」にオンライン参加し、TDK事件(東京国税不服審判所平成22年1⽉27⽇裁決)についての研究報告を聞きました。

内国法人と国外関連者間で行った棚卸資産の販売やロイヤリティ支払に対して、残余利益分割法を用いて移転価格税制による更正処分が行われた事件です。

当時の移転価格税制では、まず基本三法(独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法)を原則とし、それが適用できない場合に他の残余利益分割法などの利用が認められることとなっていました。

納税者は基本三法の適用検討が十分にされていないと主張しましたが、この事件では納税者と国外関連者との双方向の一連の取引を独立企業間価格算定の対象とするので、個別取引への適用を前提とする基本三法は利用できないと裁決されたようです。

結果として残余利益分割法の適用が肯定されたのですが、基本的利益についても、残余利益についても、その算定方法の部分で納税者の主張がかなり認められて、課税庁による更正処分額の過半を取り消す裁決がされたもの。

その意味では納税者の主張を容れたレアな移転価格裁決だったといえ、だからこそ訴訟にまでは発展しなかったということのようです。

残余利益分割法適用の場面で特に重要なのは、国外関連者が支出した費用のうち、無形資産の形成に貢献するとみられるものをもらさず集め、その根拠を用意しておくことだといえそうです。

金山知明税理士事務所・国際税務コンサルティングオフィス

神戸に事務所登録をしている税理士、米国公認会計士、大学教員です。

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