本日は国際課税「一角塾」にオンライン参加しました。
今日は移転価格税制による課税関係が争点となった今治造船事件(高松高裁平成18年10月13日判決)についての報告を聞きました。
原告法人Xがパナマの関連会社との間で行った船舶売買取引につき、移転価格税制上の独立企業間価格法(CUP法:Comparable Uncontrolled Price 法)の適用可否が争われた事件です。平成3年~6年というかなり古い事件。
CUP法は、その適用のためには、「同種の棚卸資産」であり、「同様の状況の下で」取引された比較対象取引を探してくる必要があります。課税庁Yは、Xと非関連者間の船舶売買を比較対象取引とし、それよりも実際の売買価格が低いとみてCUP法による課税。
Xは、Yが比較対象とした取引と、本件の国外関連取引との比較において、船舶の売買価格は個別性の高いもので、標準的な価格の線を引きがたい、CUP法でやるにしても、X独自の事業内容などに基づく個別的な事情があるから、差異の調整が必要だと主張。
裁判所は、船舶価格は個別性が強いとはいえ、国際的な市場も存在するから、CUP法の採用は適切で、この件においては独立企業間価格の「幅」を認めず、Xがいう差異調整についても否定して、Yの課税処分を相当としました。
移転価格税制では、独立企業間価格の算定方法がいくつもあり、どの方法を選択するか、また何を比較対象取引としてもってくるかによって、結果は大きく変わります。
課税庁が選定した方法について、その方法が最適である立証責任は課税庁にあると思うが、その立証責任を果たしていないとして課税が取消されるケースは非常に少ないと見受けられます。
納税者としては、国外関連取引を行うときは、常に移転価格税制による課税リスクがあることを意識して、特定の方法の適用を前提として、自社の取引価格が合理的である根拠を十分に用意しておく必要があることになります。
【memo】
租税条約があれば相互協議が可能で、価格の事前確認APAも視野に。相互協議では独立企業間価格は一定額でなく、幅があることが前提。
OECDガイドラインでは「幅」があることを明記。
移転価格税制は「価格」から「利益」へ
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