国際課税勉強会20(来料加工)

本日は、国際課税勉強会一角塾にウェブ参加しました。

今回のテーマは、日本企業の香港子会社が獲得した所得に関するタックスヘイブン対策税制による課税処分の当否が争われた来料加工事件です。来料加工に対するタックスヘイブン対策税制による課税は、平成10年代から20年代にかけていくつも訴訟になった有名なケースです。

今日メインで取り上げられたのは東京地裁平成24年7月20日判決。事件当時までに中国は世界の工場と呼ばれる地位を築いていて、日本法人が香港の子会社を通じて中国の工場に製造を委託し、完成した製品を海外で販売するという事業形態が多くみられました。

このとき、香港は法人税率の低いいわゆるタックスヘイブンなので、タックスヘイブン対策税制(子会社所得合算税制とか、CFC税制などとも呼ばれる。租税特別措置法66条の6)により、その子会社所得が日本の親会社の所得として課税されることがあり得ます。

本件でも日本の税務当局は、まさにこの規定を使って、子会社Aの所得を親会社Xに合算して課税しました。しかし、この規定には適用除外要件があり、簡単に言えば、この香港子会社Aの事業が卸売業であれば販売先が関連者以外なので課税を免れ、製造業であればAの所在地(香港)で製造していないので課税対象になるという関係にありました。

税務当局は、Aが中国法人を自社工場のように利用して、中国で製造を行い、これをAの製品として販売しているので、Aの事業は製造業であり、かつ、Aの所在地以外(中国)で製造行為が行われているので、適用除外要件を満たさず、タックスヘイブン対策税制の課税対象となるとしました。

これに対し、XはAの事業が卸売業ではないとしても、中国の法人に製造を委託しているので単純に製造業と言えるものでないこと、仮に製造業だとしても、Aの所在地(香港)で事業の管理が行われているので中国で事業を行っているわけではないと主張しました。

裁判所は結局、税務当局の主張を採用して、製造業として事業が行われる場所は、製造行為がどこでされているかによるので、Aが中国で製造していることになるから、適用除外にならず、タックスヘイブン対策税制による課税は適法と判断しました。

なかなか納得しがたい判決だと感じます。もともとこの来料加工は、中国工場で製造することの利便性、低コスト性や、香港法人をつくりそれを管理監督することの容易さ、香港というビジネスハブを使うことの事業上の有利性、効率性などの理由から生まれたスキームで、日本の税を回避するための作為ではないからです。

このように、租税回避否認という規定の趣旨目的を考慮することなく、法の文言にこだわって硬直的に適用除外規定から外して合算課税するというのは、法の適用のあり方、納税者への対応として望ましくないといえそうです。



金山知明税理士事務所・国際税務コンサルティングオフィス

神戸に事務所登録をしている税理士、米国公認会計士、大学教員です。

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