国籍条項

今日は税理士会の役目で確定申告研修のスタッフをしてきました。広島国際会議場にて。


令和3年度税制改正の中で個人的に興味をもったのは、相続税法の改正でした。これまでは、相続人がまったく日本に来たこともない外国人だったとしても、その親とか配偶者である被相続人(外国人)が日本に10年超居住していた場合は、その相続人に対して、国外財産(例えば被相続人の出身国にあるお金や不動産)についても相続税の申告義務を課すという規定でした。

しかし、外国居住の外国人である相続人がその規定に従って積極的に国外財産を含めて日本の税務署に申告するかといえば疑問です。申告されなかった国外財産を、日本の税務署が調査して課税処分するというのも簡単じゃないし非現実的だと感じます。日本の税務署が外国の税務当局に協力を求めることはできても、その外国当局にとっては迷惑な話でしょう。

そこで今後は、滞在期間にかかわらず(10年超であっても)、高度専門職や研究職などの立場(ビザ)で日本に居住していた外国人が亡くなった場合、相続人が外国居住の外国人であるなら国外財産には相続税をかけない規定となっています。その方が自然といえば自然な気がします。

それにしても、近年、日本の税法には「国籍条項」が増えてきました。簡単に言えば、日本人には課税強化するが、外国人への課税は据え置き、または緩和するという内容です。

背景には、日本人が財産や住所を海外(特にタックスヘイブン)に移転することによる課税逃れが増えてきたことがあります。国は、本来課税できるはずであった人やモノが海外に逃げていくことに強い危機感をもったということでしょう。

たしかに今の時代、住所や財産を海外に移すことはとても簡単になりました。それに比べると、日本国籍を捨てて外国人になることはそう簡単ではない、そこに着目して、国籍によって納税義務を区分するという手段がとられていると理解できます。

ただ、国際化がますます進展すると、この国籍による課税の区分も合理的でなくなるのではいかと思ったりもします。諸外国がこのような国籍条項をもっているか、もっているとすればその動向はどうかも含め、今後の研究テーマとしても面白いといえます。

金山知明税理士事務所・国際税務コンサルティングオフィス

神戸に事務所登録をしている税理士、米国公認会計士、大学教員です。

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