今日は、国際課税勉強会「一角塾」にオンライン参加しました。今日は消費税の輸出物品販売に関する免税制度を利用した還付スキームについての裁判例(令和2年6月19日東京地方裁判所)研究です。
消費税法上、国内で所定の許可(輸出物品販売場の許可)を受けた事業者が、非居住者に対して物品を販売した場合には、それを輸出免税売上とすることを定めています(8条1項)。輸出免税とは、ゼロ税率の売上であり、これに対応する国内での仕入税額は売上税額(ゼロ)から控除できるので、販売事業者は結果として消費税還付を受けることができます。
この事件は、ある輸出物品販売事業者(T社)が金工芸品を外国人旅行客に対して販売(年間何百億円単位です)し、これを輸出免税売上として申告して仕入税額の還付を受けたが、この販売先(購入者)に名義貸しがあって、実は外国人旅行客が購入したわけではなく、仲介者を通じて国内の事業者(T社の仕入先であるM社)に戻っていたというものです。
つまり、外国人が購入して外国に持ち出されたはずの物品が、実は国内にとどまっていて、再度国内にて流通していたということです。事件の争点は、この売上が、輸出免税売上に該当するかどうか、またT社の還付申告が仮装隠ぺい行為によるものだったかどうかでした。
T社は、わが社は名義貸しの事実を知らなかったので、書類がそろっている以上、輸出免税に該当すると主張しましたが、国税側は、結果として外国人旅行者が購入しておらず、そもそも外国人旅行者に売ったという認識は状況的に不合理かつ不自然だともいい、輸出免税は認められないとしました。
裁判所は結局、国税側の主張を認めて、これはもともと仕組まれた国内での循環取引とみるのが相当なので、非居住者に販売したものではなく、輸出免税売上には当たらないと認定しました。また、T社の申告を仮装行為に基づくものとして重加算税賦課も認めました。
この事件の場合、T社と仲介者がある程度共謀関係にあって、購入者が非居住者ではないと知りつつ販売している節があるので、そうであれば妥当な判決であり、さらに言えば、今日の勉強会では不正偽りによる還付請求として、刑事罰(64条1項)を受けてもおかしくない事例という議論もありました。
いずれにしても、不正還付事案はもちろん厳しく罰せられるべきです。ただ、たとえば販売事業者が完全に善意であって、真実の購入者が非居住者じゃないということを全く知らなかったとした場合、それでも輸出免税が否認されて販売事業者が追徴課税と加算税賦課を受けるとすればそれは酷になるともいえそうです。
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