タックスヘイブンからの帰国

先日来、長年シンガポールで暮らしていて近年帰国された日本人の方の所得税申告について相談を受けています。その方は、シンガポール在住のとき現地の会社に就職して給与を受けていたが、帰国してからも引き続きそのシンガポール会社から給与をもらい続けています。

今回相談を受けたのは、そのシンガポール会社からの給与を、日本で申告すべきかどうかです。日本の所得税は、納税義務者を、大きく「居住者」と「非居住者」にわけています。居住者になると、日本国内の所得だけでなく、外国で稼いだ所得も、日本で課税されます。

一方、非居住者であれば、外国所得は課税されず、日本国内所得だけが課税対象となります。居住者・非居住者の区分は、おおざっぱに言えば、日本に長期的に住む人は居住者で、それ以外の人は非居住者です。(本当はもっと細かく検討しないといけませんが)。

その方は、ほぼ完全帰国しているので、2019年から居住者になっています。そうすると、シンガポール所得も日本で申告することになります。(日本帰国後にシンガポール会社から受けている給与がシンガポール所得か、または日本所得かについては、別途検討する必要ありですが)

この給与はシンガポールでも課税されているので、日本でさらに課税されると、二重課税となります。これを救済するために、日本では外国税額控除を使って、シンガポールで納めた税金を引けます。

ここまではよいのですが、問題は、シンガポールの税金の低さです。今回、日本で納めるべき税額を伝えると、金額の大きさにとても驚かれてしまいました。シンガポールの税金が少ないため、外国税額控除をしても日本に納める税額はあまり減らないのです。

しかも、この給与はもちろん日本で源泉徴収されていないため、今回の確定申告により一括で納付することになり、これがさらに負担感を増します。加えて、申告後には住民税が賦課され、それも給与天引きできないので、これまた痛税感を生じます。

日本のサラリーマンは、シンガポールよりはるかに税金が高いのに、それを当然に受入れているわけです。その理由の一端は、やはり源泉徴収+年末調整のシステムにあるのだと思います。日本の会社から給与をもらう場合、毎月多めに源泉徴収され、年末調整では還付されるので、痛税感が少ないのです。

源泉徴収と年末調整は、よく考えられた巧妙なシステムだ(国からみると)と思います。しかし、今回のようにタックスヘイブンから帰国した人にとっては、日本人との感覚のギャップが際立つ結果になるというわけです。

金山知明税理士事務所・国際税務コンサルティングオフィス

神戸に事務所登録をしている税理士、米国公認会計士、大学教員です。

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