税務裁判について

昨日、私が原告の補佐人として関わっている税務裁判の地裁判決が出て、残念ながら原告(納税者である法人)の主張が認められず棄却されたということで弁護士より知らせがありました。

税務裁判というのは納税者が国税を訴えるという構図になるのですが、納税者側の勝訴率が非常に低く、多くても10%程度といわれます。それを踏まえて今回も苦戦は予想してましたが、やはり、請求棄却となるととてもグサリときます。

約1年間(その前の審査請求も合わせると2年間)、弁護士と共に全力で取り組んできた結果であり、納税者の立場になって裁判官(審判官)にわかってほしいことを強く主張(書面でですが)してきました。多くの時間、労力、精神力を費やしました。なので、やっぱり残念です。

ただ考えてみれば、今回の訴訟に限らず、もし税務調査の段階(納税者との接触時)での税務署側の対応が、納税者に対する敬意をもってその立場を尊重するものであったとすれば、国税を訴えようとする人はかなり減るように思うのです。

特に、過去の調査においても問題が少なく、これまで真面目な納税を心掛けてきたといえる納税者に対しては、租税回避行為などを伴うものでない限り、ソフトな接触と対応に努めることが必要で、そうすることで結果的には納税者のコンプライアンス・マインドの向上と税収の増加につながると僕は考えています。

この点は、「規制者が被規制者の立場を尊重し、敬意をもって取扱えば、被規制者は自分が組織や団体のメンバーとして尊重されていると感じるので、より規則を守ろうとする傾向を示す」という社会心理学の論理と実証から裏付けられています。

税務行政でいえば、応答的規制(Responsive regulation)の論理を用いた画期的なコンプライアンスモデルを導入して、善良な納税者のコンプライアンス・マインドを傷つけないように配慮する方策を採っているオーストラリア国税庁のやり方はとても参考になるはずです。

今回の裁判についてはまずこれから判決書をじっくりと読み、事後の対応をしっかりとやります。そして今年は、僕自身の、税務行政の公正さと納税者のコンプライアンス・マインドの関係についての研究をさらに進めて成果を出したいと思っています。

金山知明税理士事務所・国際税務コンサルティングオフィス

神戸に事務所登録をしている税理士、米国公認会計士、大学教員です。

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