非居住者への賃借料と源泉徴収

確定申告期限が今年も延長になっていますが、実はもうだいたい済まされた方が多いのかなという感じですね。昨年まで20年近く、3月は出雲の事務所にてとても多忙な確定申告時期を過ごしていましたが、今年は(仕事的には)幸か不幸か余裕のある3月でした。おかげで論文の方はかなり進展した気がします。

それでも、今年もごくわずかながら、所得税確定申告を代理させてもらいました。そのうちの1件は、非居住者の申告で、具体的にはイギリス在住の方(日本人)の不動産所得の申告です。僕の専門である国際税務が絡みます。

非居住者とは外国に住所がある人のことですが、外国に住んでる人でも、例えば日本国内の不動産を他人に貸して賃貸料をもらっている場合などは、日本で確定申告が必要になります。日本に不動産を持っている方なら、通常は納税管理人を設置して確定申告に対応しておられると思います。

それよりも気を付けないといけないのは、非居住者から不動産を借りて賃借料を払っている借り手の方です。実は、貸し手が非居住者の場合、借り手は賃料支払の都度、賃借料から約20%を源泉徴収して(差し引いて)税務署に納めないといけません(所得税法212条)。

これを知らずに源泉徴収をせず貸し手に全額を払った場合でも、後で指摘を受けると、貸し手でなく借り手の方が追加的に(貸し手に満額払っているのに)20%相当額の税金を納めないといけなくなります。借り手が源泉徴収義務者となっているからです。

この源泉徴収義務者制度は、とても機械的で、ある意味冷淡です。税務署は、賃料満額を受け取った貸し手にでなく、源泉徴収を忘れて満額賃料を支払った借り手の方に源泉税額の請求をしてきます(海外にいる貸し手に税務署がいちいち連絡しない)。相手が非居住者とは知らなかったとか、忘れていたと言っても、通用しないです。これは意外と盲点なので、注意が必要なわけです。

ただし、不動産が居住用物件で、借りてる人が自らその物件に居住している場合は、例外的に源泉徴収をしなくてよいことになっています(所得税法施行令328条)。今回担当したケースはこれに該当していて、借り手に源泉徴収義務が発生しない(貸し手からすると天引きされていない)案件でした。

まとめると、外国在住の人から土地や建物を借りている場合は、基本的に(自己居住の場合を除いて)借り手が支払う家賃等から源泉徴収をしないといけません。相手が個人でなく外国法人の場合も同じです。

つまり、例えばオフィス用に不動産を借りるときなど、貸し手が外国居住者または外国に本店がある法人でないかどうか、確かめておかないと危ないということになります。不動産賃貸は仲介業者を通じてされる場合が多く、貸し手がどんな人かわからないケースが多いと思うのでなおさら要注意ですね。

日本在住の人から不動産を借りても源泉徴収義務が発生することはありませんが、相手が外国在住(非居住者)だと、突然源泉徴収して納付する義務が降りかかってくるわけです。こういうところにも国際税務の落とし穴があります。

本川沿いの桜が咲き始めました。

金山知明税理士事務所・国際税務コンサルティングオフィス

神戸に事務所登録をしている税理士、米国公認会計士、大学教員です。

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