「定期同額給与」について

いきなりですが「定期同額給与」という言葉をご存じでしょうか。役員報酬の損金算入(法人税の計算上経費に算入すること)のための条件を表す税法規定の文言です。

日本の法人税法上、役員報酬は原則として毎月同額でないと損金算入できないことになっています(34条)。その他、利益連動型の報酬とか、事前に届け出た役員賞与など、手続を踏めば損金算入できる規定もありますが、基本は定期同額給与の規制をうけることになります。

定期同額給与の規定は、私が知る限り日本独特のもので、条文の文言は必要以上に厳格に書かれています。というのも、毎月同額でない役員報酬は、すべて損金不算入(法人税の計算上経費に入れないこと)とするという、かなり冷酷な表現になっているからです。

つまり、この文言からすると、ある月の役員報酬が1円でも他の月と異なると、その年度の役員報酬の全体が損金不算入となると読めるわけです。この場合、決算書のうえでは役員報酬という費用に計上されているのに、法人税の計算上は役員報酬が損金から除外されてしまうことになります。

この規定ぶりは、あまりにも硬直的じゃないでしょうか。役員報酬は職務の対価として適正額である限り、損金算入するのが当然だからです。個々の会社の事情を無視して定期同額を条件にするのはきつすぎると思います。

現在、この定期同額給与の規定に関連して係争中の案件があり、実は私もかかわっています。簡単に言えば、法人が役員に支給していた回数手当について、毎月少しずつ金額が違うという理由で、手当年額の全体を損金不算入として追徴課税処分を受けてしまったので、それを不服として訴訟を起こしているものです。

定期同額給与というのは、もともと、法人が役員報酬を利益調整に利用するのを防止するために考えられた仕組みです。そうであれば、変動手当であっても、毎月金額が大きく変わらず、利益調整になる余地のないものについてまで、その全額を損金不算入というのはやはり行き過ぎと感じます。

定期同額給与規定の文言上、その手当の全額を損金算入するというのも無理があるとしても、少なくとも変動手当のうち月別の最低額を超える部分だけを損金不算入にすれば趣旨目的に沿うはずです。

法律なので、その文言を尊重するのは当然ですが、法の趣旨目的を超えて不合理な結果となる場合にまで機械的に文言にこだわった解釈をすることには、大きな疑問を感じます。このような定期同額要件を課す規制自体が、妥当なのかどうかについても議論が高まることを期待しています。

金山知明税理士事務所・国際税務コンサルティングオフィス

神戸に事務所登録をしている税理士、米国公認会計士、大学教員です。

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